ポジティブ・アレルギー

物事を顧みず、ひたすら自身にとって都合の良い部分だけを見て突き進まなければならない、ポジティブ社会への拒絶反応

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

人間問題の解決を求めて

<ある日の夢の中での御話…>

          ・
          ・
          ・

学校嫌いの少女は今日も学校をサボっている。
親には「鬱病の症状が重い」という言い訳をしている。
そう言うと、親が勝手に学校の方に連絡してくれる。

少女の一家は大きな財閥の一族の中でも名門の一つで、
この辺り一帯を牛耳っていて、学校の存続にすら
影響を与えることが出来る程の力を持っている。

そのせいもあるのか、ズル休みしても
学校から文句を言われたことはない。

だけど学校が苦手なのは嘘ではない。
鬱病であろうとなかろうと、そこは少女にとって
辛いことしか起こらない場所なのだ。

そうやって学校をサボり、いつもの様に漫画を読んでいると、
突然、何の用かも告げられず、無理やり父親に連れ出された。

何かただ事ではないことが起こりそうな予感がした。

漫画を読んでいる所を見られたのがマズかったのか?
それにしても、まるでいつもとは別人の様だ。
気安く声を掛けることすら躊躇われる雰囲気。

実際、その雰囲気に呑まれ、何故自分が連れ出されたのか
さえ尋ねることが出来なかった。

そして、気が付くと何時の間にか
エレベーターに乗って地下に降りていた。

そのエレベーターから降りると、
そこには大きな開けた空間があった。
初めて来る場所だ。

岩肌がむき出しになったままであることや
その形状からして、恐らくその空間は
自然に出来たものであろうことが窺える。

振り返ってみると、
自分が降りてくるのに使ったエレベーターの並びに、
パイプオルガンの様に壁と一体化した大仰な石の座椅子があり、
誰かがその椅子に縛り付けられた状態で座っていた。

 「殺せ」

そう言うと、父親は少女に鞘に収められた
一本の剣を手渡した。

「大丈夫、あいつはアンドロイドだから殺してもいいんだ」
「あいつを殺さなければお前が殺される」

父親は全く無表情なまま、
事務的にただ粛々とそのルールを告げたあと、
少女が自らが置かれた状況の意味を問う暇も与えず
あっさりとその場から姿を消してしまった。

いつも我儘ばかり言って困らせているから、
そのことを腹に据えかねてこんなことをするのだろうか?
全くそんな素振りすら見せたこともなかったのに、
本当はその仮面の下でいつも怒りの炎を
燃やしていたのだろうか。

それとも、もっと何か別の理由があるのだろうか?

少女は、何がなんだかさっぱり分らず、
ただその自分の置かれた状況に対して
途方に暮れるだけだった。

一方、アンドロイドの方は、
その理不尽で危機的な状況にある筈の自らの境遇に
特段不満を漏らすわけでも取り乱すわけでもなく、
「君が僕を殺さないなら、僕が君を殺すよ」
「僕も生き残りたいからね」
なんて言っている。

多分、彼は彼を殺せなかった人間の代わりに
人間になるのを待っているのだろう。

殺さなければ殺される。

少女は納得こそ出来ないものの、
それが決して逃れようのないルールである
ということを少しずつ理解し始めた。

そう、この仕打ちは自分が我儘を言って
親を困らせたからではない。
その時期が来たからだ。

みんなこの儀式をクリアし、そして大人になっていったんだ。
虫一匹殺せないくらい優しそうなあの人達も、
ちゃんとこの儀式を通過したからこそ
今もああやって生きていることが出来るんだ。

いや、それとも既に本物は成り代られて
この世にいないのかもしれない。
どちらにせよ、そのうち一方が一方を殺し、
そうやって生き残った者であることは間違いない。

しかし、理屈ではその状況を理解出来ても、
どうしても納得がいかない。

(…この辺りから、始めは客観的であった筈の物語が、
いつの間にか主観的なものになっていた)

それがルールであることは分った。
だけど何故、自分が知りもしない者を
(そのルール以外に)理由もなく殺さなければならないのか。
殺したくなんてないのに。

かといって、アンドロイドに殺され
自分に成り代わられるなんて絶対に嫌だ。

殺したくない、でも殺されたくもない。

どうせこんな儀式を通過せねばならない
ことが決まっているのなら、
何故良心なんていうものを植えつけたんだ。
何故生き物を殺してはいけないなんて教えたんだ。
そのせいでこんなにも苦しまなければならないじゃないか。

悩みに悩んだ末、少女はついに決心した。

「殺してやる」

しかし、殺すのはアンドロイドではない。
このルールを強要する人間達を、だ。
道徳という偽のルールを押し付けておきながら、
自らはそれを破って生き残り、恩恵を受けている者達をだ。

そして、そのルールと伝統自体を殺すのだ。

少女は、殺したくもない者を脅して殺させるように
仕向ける彼らのやり方が我慢ならなかった。
自分達が殺人者(それがアンドロイドであろうと)
でありながら、子供には道徳を教えてきたことが許せなかった。

彼らは、少女が殺そうと殺されようと
それを自らの選択として捉えるのであろう。
そして、生き残ったとしても彼らの共犯者として
縛られ続けるような気がした。

でもそんなのは選択したとは言えない。
自分の意志とは言えない。
彼らの共犯者として一生を送りたくなんかない。

奴らの思惑通りに動いてたまるか!
そんなに殺しをさせたいのなら、お前らの方を殺してやる。

少女がいる開けた空間の奥の方には、
幾つかの横穴が開いていて、更にその横穴の奥には、
蟻の巣の様に幾つもの張り巡らされた通路と
無数の部屋があり、ちょっとした一つの町の様に
なっているのが何となく窺えた。

そしてその町に住んでいるのは、
この儀式を通過して地位や力を得た者達だ。
そして今は彼らがこの伝統的ルールの保守管理をしている。

少女は穴の奥に進み、彼らを一人一人殺していった。

殺すといっても一時に絶命させるのではない。
鞘に収められたままの剣を使い、
それで彼らを突いたり殴ったりして
その抵抗力を奪った上で、自力では脱出出来ない程
深く大きい穴の中に落とすのだ。

殺されたアンドロイドを遺棄する為の穴だ。

その穴の底で、自分が何故そうなったのかを
よく考え、それを理解してもらった上で死んでもらう。

少女が殺そうとする相手はなんだか
憤慨していたようだったが、
それが彼女の心に届くことはなかった。

殺しを欲したのはあんた達の方だろう。
それが自分が殺される側に回ったらからといって
何を喚き散らすことがあるのか。
全く、身勝手にも程がある。

少女はその彼らの憤りを軽く受け流し、
自分のやるべきことにだけ集中した。

そう、終わらせるんだ。
このルールが生み出す矛盾と苦しみを
二度と誰にも味合わせない為に。

もうその時には、少女は既に完全に私自身になり、
男性になっていた。

そして、夢から醒めるとそこにはいつも通りの、
悪夢以上に無残な現実が待っているのだった…。

          ・
          ・
          ・
 
スポンサーサイト

 | HOME | 

プロフィール

後正面

Author:後正面
ひきこもりという役割を引き受け
ざるを得なかった一人として
人間について考えてみる。
でも、本当はただの断末魔ブログ。

働けど無職。
-------------------------
※コメントは記事の内容(主題)に関するもののみ受け付けています。また、明らかに政治活動的な性質を持つ内容のコメントはお控え下さい(そういった性質を持つ発言は、それを許容するような姿勢を持つ一部のブログを除いて、自分のブログで行うものだというのが私の基本的な考え方です)。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。