ポジティブ・アレルギー

物事を顧みず、ひたすら自身にとって都合の良い部分だけを見て突き進まなければならない、ポジティブ社会への拒絶反応

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分類という傲慢、それをぼやかす誠実さ

恩年92歳というご高齢ながらまだまだ現役で活動中のフランスの作曲家、
デュティユー氏の若き日の作品(因みに彼は去年、その齢にして来日まで
果たしているというから中々のツワモノだ)。

フルートとピアノの為のソナチネ/デュティユー


ただこの印象派風の曲を聴いても分かる通り、彼は現代の作曲家であり
所謂ゲンダイオンガク風味をまぶしたような曲も書いてはいるものの、
完全にそちら側に重心を移し切ることはしない。
それ故、ゲンダイオンガクに馴染みのない人が彼の曲を聴くと
ゲンダイオンガクに聴こえてしまうということは往々にしてあるが、
ゲンダイオンガクを聴く人からは「これはゲンダイオンガクじゃない」
と言われてしまう微妙な立ち位置の作曲家。

彼のことをなんだか煮え切れない作曲家と感じる人もいるだろう。
しかし個人的には、その境界線上を行ったり来たりしながらも
結局ゲンダイオンガクには染まりきらず、自分の信じる音楽に留まり
続けるという彼のその姿勢にこそ魅力を感じたりする。
「何か新奇なことをして名を上げてやろう」といった下心や、
「進歩」という幻想にしがみ付くための手段として音楽を使っている
という欺瞞が感じられないというか。
あくまで目的は音楽の方にあるということが感じらとれるというか。

 ***

人間は本来意味などありはしない現実に対して様々な意味を付加し続ける。
そして各々は己の獲得した感覚や思想、宗教、文化的背景、立場などから
生み出した“物差し”で物事を分析・分類し、それによって何らかの法則を
見出すことによって現実を理解した気になり、それにすがることで
「意味の無い現実」という恐怖から逃れ、安心感を得ようとする。
人間はそういった習性を持っている。

その為、例えばジャンルという分類からの逃避は得てして
「ジャンルに囚われない」と意識する形でジャンルに囚われる
羽目になるのが大方の辿る道。だが人間がそうしたサガを持つ以上、
物事を分類するという行為自体は否定出来ないものの、現実を国境線の様に
ハッキリとした線引きで仕切ることなど出来る筈もないというのもまた事実。
もしハッキリとした線引きがあるとしたら、それは紛れもなく人間が
捏造したもの。それも分類に対して何の誠実さも持たない人間の手に
よるものだ。何故なら、分類という作業に本当に真摯に向き合った時、
どのような場所や時代、思想、立場でも揺るがない真に正しい普遍的な
“物差し”などありはしないということに気付くからだ。そして分類に必要な
情報の全てを手に入れることすら出来ない(例えば人間は他者の感覚や
経験を決して知ることが出来ない)ということにも気づくだろう。

あらゆる線引きは、所詮数多ある線引きの一つでしかない。
現実は常に人間達が生み出した様々な線引きが重なりあいながら、
その時点に於いてどの線引きがより力強さを獲得しているかでしかない。


だから分類に対して本当に真摯な人間は、その分類が単に自らが現実で
迷わない為に目印として張り付けた付箋(レッテル)でしかないのではないか、
という後ろめたさや、それが“個人の主張”でしかないのにあたかも
“全ての人間に共通するもの”だと偽装しているという罪悪感を感じながらも、
人間のサガとしてそれを行い続ける。

ただそれを行いつつも、その人間の持つ「誠実さ」だけが罪滅ぼしとして
その線をなるべくぼやけたものにしようとする。断定を避けようとする。
例えそれが自身にとって不利益を齎す行為だと理性では分かっていても。

彼の音楽からは、その“煮え切れなさ”故に、逆にそういった意味での
「誠実さ」を暗喩的に感じることが出来る。尚且つ全人類に共通すると
される「進歩」という幻想、つまり“集団”の価値観(実際はそれも数の力
を上手く利用して力を得た個人の価値観でしかない)よりも、最終的には
自分という“個人”の音楽の方を信じるという姿勢を見出すことが出来る。

彼の曲が持つ方向性の“煮え切れなさ”を自分がマイナス要素として
感じることがないのは、多分そういったことが関係しているのだと思う。

まあ、実際当人がどういう想いで作曲をしているかは全然知らないので、
あくまで自分が彼の曲を聴いて勝手にそういった事を想起しているだけなのだが。

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ひきこもりという役割を引き受け
ざるを得なかった一人として
人間について考えてみる。
でも、本当はただの断末魔ブログ。

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