ポジティブ・アレルギー

物事を顧みず、ひたすら自身にとって都合の良い部分だけを見て突き進まなければならない、ポジティブ社会への拒絶反応

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風評は市場の本質×風評としてのイズム

福島原発の事故による風評被害を防がなければならない、というような主張が世間を席巻している。だが、そういった主張にはどうも釈然としないものを感じてしまう。というのも、元々市場の在り様を形作っているのは風評だからだ。
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 ▼(1)日本ブランドの失墜

例えばブランド戦略が成立するのは、イメージが人々の消費行動を決定付ける主要な要因となっているからだ。いくら実用面だけを追及しても、決してそれは人気商品にはならない。それが人気商品として他の競合商品に打ち勝つためには、それなりのイメージが伴っていなければならない(ex.実用面を最優先させたファションは、いわゆるオタク・ファッションになる)。

同じように、健康食品と呼ばれる類の商品は、必ずしもそれが健康に良いから売れているわけではない。多くの健康食品は「健康に良い」というイメージによってそれが消費されている。後になってから、むしろそれは健康に悪かったという事実が判明する場合だってある。海外から個人輸入した健康食品によって重篤な病に蝕まれ、亡くなった者すらいる。つまり、健康食品の人気は健康に良いという事実ではなく、「健康に良い」というイメージや風評によって支えられている。

そして多くの日本企業は、世界的な健康ブームに乗り、日本ブランドが持つ安全性というイメージを積極的に利用して商品を売り込む戦略を取っていた。ところがそんな折、今回の原発事故が起こった。

東京新聞:「関東産」でくくられ 県産野菜に風評被害も:埼玉(TOKYO Web)

食の放射能検査、不満続々…国で統一基準を(読売新聞)

■「厳しい値」

 暫定規制値についても、疑問の声が上がる。野菜類の規制値(根菜、芋類を除く)は1キロ・グラムあたり放射性ヨウ素2000ベクレル、同セシウム500ベクレル。茨城県で出荷制限となっているパセリは軽くて表面積が大きく、重量で比較すると他の野菜に比べて数値は出やすいが、実際に食べる量はわずか。県農政企画課は「現実にそぐわない数字」と指摘する。


銚子市漁協への指導要請=水揚げ拒否で千葉県に-農水省 - 時事通信

日本の農産品、25カ国が規制 中東や南米にも拡大 - 47NEWS

多くの国々は日本ブランドを敬遠し、日本人もまた東日本ブランドを敬遠し始めている。そういった市場の動向に懸念を抱き、憤る者も多い。低線量被曝なら安全なはずなのに、何故売れないんだ。うちの商品は放射能(放射性物質)で汚染されていないのに、何故売れないんだ。「現実」にそぐわない規制を緩和すべきだ、と言って。そしてその怒りを、放射線に対して悲観的な見方をする消費者や、そういった情報を流す者達に向ける者も少なくない。

だが、そういう人達は根本的な勘違いをしている。というのも、今までそれらの商品が売れていたのは「安全だから」ではない。安全か否かについて全く心配する必要がないという安心“感”が伴っていたからこそ売れていたのだ。しかし、今やそれは「健康に良い」どころか、「極端な量さえ摂取しなければ健康に害を及ぼさない」ものになってしまった。危険性は低くとも、気にせずに済むものから気にしなければならないものになってしまった。このイメージ毀損は、市場における商品価値という観点から見れば極めて大きな影響を持っている。

放射能暫定限度を超える輸入食品の発見について(第34報) - 厚生労働省

 旧ソビエト連邦チェルノブイリ原子力発電所事故に係る輸入食品中の放射能濃度の暫定限度は、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告、放射性降下物の核種分析結果等から、輸入食品中のセシウム134及びセシウム137の放射能濃度を加えた値で1kg当たり370Bqとしている。


実際、日本もまた、チェルノブイリ事故の際には現在よりもより厳しい――今なら「良識的な日本人」から「現実にそぐわない」と評されるような――基準を設けていた。

つまり、実際に安全か否かはそもそも重要ではない。端的に言えば、日本ブランド、東日本ブランドは今、市場で全く人気がないのだ。安全性云々以前に、それらが持つイメージが大きく損なわれ、市場価値を失ってしまった。だから売れない。合計で年間何ミリシーベルト以下なら大丈夫、みたいな言い訳をしなければならない商品が、他の競合商品と競り合って勝てるはずもない。とりわけ、日ごろから「安全性」というイメージに敏感であるが故に日本ブランドの商品を買っていた消費者が、今度は逆にそれを忌避すべきものとして認識するようになるのは当然の成り行きだろう。

 ▼(2)風評との戦いは市場との戦い

こういった現象を風評被害だと言って憤る人達は、安全なものを安全でないと思い込んでいる「愚か者」がいるから商品が売れない、と思っているようだ。だから市場における人気の無さは「被害」に置き換えられ、「愚か者」や「不適切情報(放射能に対する悲観的見方)」を流す「加害者」との戦いが始まる。

もちろん、低線量被曝については必ずしも問題がないとは言い切れないため※1、実際に安全でないと思っている人もいるだろうし、中には単なるデマを信じて買い控えをしている人もいるだろう。だがそれは本質ではない。極端な言い方にはなるが、内容がどうであろうと、危険であろうとなかろうと、需要があればものは売れるし、需要がなければ売れない。人気があるものは売れるし、人気が無いものは売れない。そういった風評に左右されるのが市場だ。そして今の今まで、そういった風評を最大限に利用してきたのが日本ブランドだったはずだ。それが今、失墜したのだ。

さらに言えば、「被害」説を採る人は、「愚か者」が「適切な情報」に触れ、それを理解すれば再び商品が人気を取り戻すことができると考えているようだが、それも誤りだろう。何故なら、人間の感覚は知識によってコントロールすることができるようにはできていないからだ。ストレスを自意識でコントロールできないように、「キモい」という感覚を理屈で払拭できないように、イメージや不安(感覚)を知識で完全にコントロールすることなどできない。この問題の対処法は、人々が不安疲れで不感症になるのを待つことくらいしかない。

要するに、日本・東日本ブランドは安全性に問題があるから云々以前に、人気が無いから、市場価値が無いから売れない。だが、未だにその事実を受け入れられない者も多い。だからその「人気の無さ」を「被害」に読み替え、風評と戦う者が現れる。しかしながらそれは市場の否定にも等しい行為であり、不人気商品が上手く流通しないことに腹を立て、何故買わないんだ、と言って逆切れしているに等しい。客が馬鹿だから商品が売れない、と言っているに等しい。

 ▼(3)風評としてのイズム

道徳的な理由で騒ぎ立てる人達はともかく、実際に被災した人達が、原発事故の影響で努力する場を失ってしまったり、或いは自分の努力の結晶が市場で爪弾きにされたりすることのやるせなさをどこかにぶつけたい、という気持ちは分かる。なんせ自分もまた、人間マーケットにおいて廃棄されるべき烙印を押された商品(労働力)だからだ。市場というのは元々そういう冷酷さを持っている(それが市場によって媒介されるものである以上、必ず売れ残りや使い捨てという問題が生じる)。

――にしても、こういった世間の動向にはどうも釈然としないものも感じてしまう。というのも、これまでこの社会は、市場による結果を「正しさ」の主たる根拠にしてきたはずだからだ。それが突然、市場を否定し、人気の無さを「被害」であるとする主張が主導権を握り始める。そしてこれまで散々「自己責任」を唱えてきたはずの社会が、「人々を不安にさせるから」という理由で好ましくないとされる情報を隠し、人々の消費行動をコントロールしようとし始める。中国や北朝鮮を“日本とは違って”言論の自由が無い国であるとし、問題視してきたはずの民衆が、パニックを防ぐためという大儀と「煽るな」という恫喝によって、ボトムアップ的に情報統制をしこうとし始める。共産主義――努力を一旦作業に置き換えることで個々人の努力具合を測り、それを結果に反映させようとする、努力によるユートピアシステムの造成――を嘲ってきたはずの人達が、努力が実らないことの不公正さを説いてみせる。そういった手のひら返しがあるにもかかわらず、かといってパラダイムシフトが行われた様子もない。

こういった現象から分かるのは、多くの人々にとって内容としての理念や原理、主義などは、初めからどうでもよかったということだろう。市場における商品は内容よりもまずイメージが重視されるように、「市場原理」や「自己責任」、「言論の自由」、「共産主義/資本主義」などの理念やイズムも、ただその肩書きが持つイメージや風評が、その時々の都合で体よく利用されてきただけに過ぎない。結局そういうことなのだろう。

――しかし、幾らそうやってこの状況に理屈を付けて自分の感覚を納得させようとしてみても、やはりこういった世間的趨勢の出鱈目さに対する気持ち悪さはどうしてもなくならない。



※1 線量限度の被ばくで発がん 国際調査で結論 - 47NEWS

 【ワシントン30日共同】放射線被ばくは低線量でも発がんリスクがあり、職業上の被ばく線量限度である5年間で100ミリシーベルトの被ばくでも約1%の人が放射線に起因するがんになるとの報告書を、米科学アカデミーが世界の最新データを基に30日までにまとめた。報告書は「被ばくには、これ以下なら安全」と言える量はないと指摘。国際がん研究機関などが日本を含む15カ国の原発作業員を対象にした調査でも、線量限度以内の低線量被ばくで、がん死の危険が高まることが判明した。  低線量被ばくの人体への影響をめぐっては「一定量までなら害はない」との主張や「ごく低線量の被ばくは免疫を強め、健康のためになる」との説もあった。報告書はこれらの説を否定、低線量でも発がんリスクはあると結論づけた。

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ひきこもりという役割を引き受け
ざるを得なかった一人として
人間について考えてみる。
でも、本当はただの断末魔ブログ。

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