ポジティブ・アレルギー

物事を顧みず、ひたすら自身にとって都合の良い部分だけを見て突き進まなければならない、ポジティブ社会への拒絶反応

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安全にとってマイナスな高速化(技術)

インドネシア新幹線、「白紙撤回」の裏事情 | 鉄道最前線 | 東洋経済

白紙撤回の背景には、インドネシアにおける都市部と地方の格差がある。ジョコ氏は、これまでの大統領のような名門家や軍出身といったエリートではなく、貧困家庭の出身だ。所得分配制度の改変を公約に掲げ、貧困層の支援を重視してきた。

インドネシアの低所得者層にとって、運賃の高い高速鉄道は高値の花だ。政府のカネを使って開業にこぎつけても、乗るのが所得の高いビジネス客ばかりだとしたら、低所得層から不満が出るのは間違いない。(中略)

もう1つ、注目すべきポイントがある。それは「時速200~250キロメートルで十分だから、コストを30~40%下げてほしい」という点である。速度は速いに超したことはない。ただ、高速運転にはその分だけカネがかかる。安全面や環境面の要求が高くなるからだ。

ジャカルタ―バンドン間の144キロメートルは、日本でいえば東京―新富士間に相当する。この程度の距離なら、時速200キロメートルと300キロメートルで所要時間にそう大きな違いはない。それなら事業費が安いほうがいい、というわけだ。(中略)

TGVは目下、高速バスや格安航空との競争にさらされている。対抗策として選んだのは、速度アップではなく、運賃の引き下げだった。

また、ドイツの大手メーカー・シーメンスがドイツ鉄道向けに開発中の新型高速鉄道車両「ICx」の最高速度は、時速230~250キロメートルにとどまる。速度は抑える代わりに高速化に伴う線路の改良負担を減らし、乗り入れ可能な都市を増やすことを狙ったものだ。

今回のインドネシアも建設コストを抑えるために速度抑制を要求したのだとすれば、スピード以外にも目を向け始めた世界のトレンドと合致していることになる。


インドネシア 高速鉄道で技術は最重視せず NHKニュース
「最も大事なのは技術ではない」を安全を軽視しているかのように捉える人がいるが、それを言うなら交渉相手は安全にとってマイナスな高速化(技術)なんて求めていなかったのではないか。しかもそれは僅かな時間短縮にしかならないわけだし。

また、金が無くても人は死ぬのだからコストにシビアなのは必ずしも人命軽視とは限らない。運賃が高くなれば低所得者層にメリットがない上に、国庫を使うとなればその分他のインフラ整備や福祉を削らざるを得ない、ということにもなるだろう。この件ではそういった目線での感想を殆ど見かけないのが気になる。

何にせよ日本側が持ち掛けた新幹線案はオーバースペックだ、と取引先に判断されたということだろう。

インドネシア高速鉄道:中国案、用地取得など波乱含み - 毎日新聞
他にも日本側の事前調査の内容が漏れてしまうというアクシデントもあったようだが、日本の敗北の原因は単に政治的なことだけではなく、こういった世界的潮流に対応することが出来なかった、ということも大きいのではないか。

もちろんダンピング競争になっていると判断したなら降りた方が良い。

インドネシア高速鉄道計画、「中国案歓迎」は遺憾=菅官房長官| Reuters
だがこの決定を「遺憾」だと言っている以上、少なくとも日本側は降りたくなかったと考えるのが妥当だろう。そもそも中国案の総事業費の方が高いわけだし(冒頭の記事によると日本案は総事業費64兆ルピア、中国案は74兆ルピア。ただし中国案の3年で運行開始、という計画には無理があるのではないか、という見方がある)。

まあ中国側が要求を飲んだ、全額融資で政府は融資保証もしない、という条件が絶対だったとするなら、それをしないと考えている日本側にはどの道勝ち目はなかったということになる。その場合唯一のチャンスは「時速200~250キロメートルで十分だから、コストを30~40%下げてほしい」を実現することだっただろう。

米中、ラスベガス・ロサンゼルス高速鉄道で合弁-習主席訪米控え合意 - ブルームバーグ
ただどちらにせよ日本はアメリカでも中国に負けているわけで、この結果を単にインドネシアの特異性だけに求めるのもまた無理がある。

夢”のリニア、実現すると可能になることが全く夢がないと話題
そもそも、例えばリニアの「始発で名古屋を出た営業マンが朝8時に東京で会議に出席。午後は名古屋に戻って事務作業、夜は再び東京でクライアントを接待、11時台の終電で名古屋に戻る――そんな働き方を可能にする」 みたいな考えは日本でしか受け入れられないだろう。そんな働かされ方をするくらいなら高速鉄道なんてない方がマシという。こんなことのために貴重な予算を投入しても、低所得者層はもちろん、殆どのサラリーマンにとっても総合的に見るとマイナスにしかならないだろう。

しかしそれでも日本政府はそれを為そうとしている。そういった国内でしか通用しない内輪ノリで外部と折衝しようとしていたなら、それは上手くいくはずがない。

これに限らず高速化、或いは技術そのものを重視するあまりに他の何かが失われる、ということは幾らでもあるわけだが、日本人はそういったことに余りに無頓着だ。その無頓着さ故の技術の高さを誇ってみせたところで、相手もそれを評価するとは限らないだろう。実際高速鉄道を外に売り出すつもりなら、高速化よりもそれを犠牲にしてコストを下げる方向でのノウハウこそ積み重ねておくべきだった。

もちろん相手がいることだから、努力すれば勝てるなんて保証は全く無いが、力を尽くす方向が間違っていたのではないか、と省みることは重要だろう。

だがこの件ではそういった省みは殆ど見られないどころか、「最も大事なのは技術ではない」発言を理由に、日本案を採用しなかったインドネシア側を揶揄するようなコメントが非常に多く見られた。

しかしそんな風に商談に失敗した原因を取引先の不見識に求めるなら、この先の受注競争の前途も暗いだろう。グローバル人材育成のために英語教育の充実を、みたいな話はよく目にするが、その手のコメントを見ていると、そんなことよりももっと先に見直さなければならないことがあるのではないか、と思ってしまう。

さっそくインドネシアを敵国認定するかのようなコメントも幾つか見かけたが、受注競争で選んでくれなかったからといって敵国認定していたら、それこそ世界中が敵国になってしまう(その理屈で行くとアメリカも既に敵国)。

こんなことでは日本がこんな風に見られるのも仕方がないよなあ、と(日本人は世界をこういう風に見ているに違いない、という偏見地図)。

因みに全く関係ないが、自分が一番最初に話した言葉は「新幹線」だったそうだ。

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